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■第30話 「初夏の訪れ」 2012年5月21日

手前の大きな花が雌花、後方にたくさんあるのは雄花 軽井沢では八重桜も満開を過ぎ、ヤマツツジの花が咲き始め、今週末には咲きそろうことでしょう。キリシマツツジやホンギリシマの鮮やかな蕾もちらほら開花しています。

今日はこの春初めてカッコウの声を聞きました。つい先週までは霜注意報が出ていましたが、そろそろ土も暖まり、いよいよ植物観察のおもしろい季節の到来です。

春の山野草は種を結ぶ頃で、だんだん、初夏に向けての花が多くなってきます。クリンソウ(九輪草)の赤い蕾が伸びてきましたし、オカトラノオ(丘虎の尾)の群生が出てきました。自生のルイヨウボタン(類葉牡丹)の黄色い花も開きはじめ、ボタンの葉のような大きくて美しい葉と相まって東斜面を彩ります。

黒紫色の実が美しい山野草です ミツバは毎日やわらかい葉を次々と伸ばし、背もだいぶ高くなってきました。お吸い物や親子丼などの卵料理に使って、この季節は助かります。フキの葉も、ガーデンの地面を覆い隠すほど大きくなってきております。ガーデンは山ブキが中心ですので、少し小ぶりですが、家の裏は栽培ブキが周りの畑から種が飛んで増えて巨大になります。

栽培ブキは筋を取って薄味の鰹ダシでやわらかく煮て仕上げるとおいしいのですが、野生の山ブキは筋を取らずに醤油と酒(みりん)、砂糖で「キャラブキ」にすると、蕗だけなのにとてもおいしいダシが出ます。ガーデンでは山椒の木から取った青い実を塩漬けして保管しておき、こうした佃煮などに使います。これから6月の間に大量に一年分のキャラブキを作っておいて、小分けにして冷凍庫で保存し、大切に食べております。卵かけご飯とキャラブキ、シンプルな吸いもの(鰹ダシに具はガーデンの山椒の木の芽かミツバ)という食事は、体の中がすっきりと浄化されるようで、至福のひとときです。

ノブキは食べるフキとは別種です(真ん中はスミレの花) これからの時期は、野草茶のもとになる野草をせっせと収穫してよく流水で洗い、アクを流し、干しておきます。なお、私どもは、植物の採取はすべてソフィアート・ガーデン内か自宅の敷地内のものだけに限っております。

カキドオシはピンクの小花をつけて群生しており、マルハナバチと競争しながら、私もどんどん収穫します。花が終わるとカキドオシは長く長く伸びますが、花の咲く頃が、柔らかくて薬効も優れているようです。花ごと天ぷらや油炒めもおいしいです。スギナ茶のスギナも大きくなりましたので、摘み採ります。

そして、ヨモギもふさふさとした毛がある新芽が大きくなってきました。今までは天ぷらの具にしましたが、これからはヨモギ茶用に摘んでいきます(アクで爪が黒くなります)。パートナーはヨモギの天ぷらが、私はウドの天ぷらが好きです。タラノメは上品で美味で万人受けして、間違いがないのですが、こうした香りの強いありふれた野草は、お得感もあって天ぷらに上等の具材です。

よく見かけるかわいらしい山野草 ヨモギは日本中の至るところに自生していますので、誰でも知っている「雑草」扱いの草です。とは言っても、公園などのパブリックスペースだからといって、 どこでも採ってもよいというわけではありません。また除草剤や衛生状態の不安もあるため、食べられることを知らない人も案外多いかもしれません。ヨモギには多くの優れた効能があります。灸のもぐさはヨモギの綿毛であることは有名です。大きくなりすぎて、もはや食べられない夏のヨモギは干して燃やせばヤブ蚊を避ける天然の蚊除けになります。

ようやく桑の葉が、雄花の蕾の房と同時に開いてきました。やがて、良く晴れた日に雄花が一斉に黄色い花粉を「ポン!」とまき散らす様子が見えておもしろいものです。早く葉を茂らせてくれないかなあ、と桑の葉茶が大好きな私としては待ち遠しい気がいたします。

桑の実もおいしく食べられますが、子供のころ沖縄で食べた大ぶりな桑の実とは違い、軽井沢のヤマグワはあまりに小さいので、そんなに収穫に気乗りしません。桑の実はツキノワグマの大好物で、桑の木の実のシーズンには(木の上で食事中の熊がいることがあるため)頭上に注意して歩いております。

オニヒョウタンボクの赤い実は毒です! 自生地がきわめて限られているオニヒョウタンボクも黄色い花を二つ対のペアで咲かせています。軽井沢ではたくさん自生しており、ガーデンにも何本かありますが、これは実は不思議な木で、隠岐島(島根県)や広島と、群馬、長野のあたりにしか存在しないという木です。実は赤く、有毒ですので、私どもは「シヌデ」(食べたら死ぬで、の意)と呼んでおります。実を見たら口にする習慣のある人は、注意した方がいいでしょう。

ところで、私は沖縄(那覇市)で生まれ育ったため、当地の植物については、ここに住むまでは詳しくありませんでした。知らないものを食べる、という冒険はしない慎重な性格ですので、ガーデンに自生している植物は、徹底して書籍や事典、インターネットなどで調べ抜いて性質を確認し、2,3年ほどかけて植物の芽だし、葉、花などの四季の様子を確認してから、最初は私一人が少量食べ、毒のないことを確認します。その後、山菜として合格したものだけをパートナーにも食べさせております。なにしろ種類によっては命を落としたり、中毒で苦しんだりすることもありますので、自生の植物は相当用心しており、確信がないものは決して食べませんし、容易には素手で触れることもしません。特にいろいろ生えてくるキノコは、今のところは、もっぱら観賞の対象です。

触れると危険 植物だけではなく、ガーデンあたりに生息する動物も昆虫も同様に調べます。自然への興味関心が高く、根っから調べることが好きなのでしょうか、とにかく知らない種を見つけたら必ず写真に撮って、図書館などで専門書を頼りに調べることによって、かなりの知識を得ました。

また、毎日寝る前に植物事典を眺めながら眠りにつくことも多いです。
おもしろいことに、いわゆる「睡眠学習」の効果か、初めて見た植物でも事典の該当ページが写真のように脳裏に浮かんで、その種の正確な名前が出てくることがあり、パートナーは少々驚いております。そのような趣味も9年目を迎え、植物への勘も多少は磨かれてきたと思います。

自然豊かな場所で会える生きものの世界の探求は、時間を忘れるほど楽しい趣味です。ガーデンの植物をはじめ、興味をもったものに、とことんこだわり続け、掘り下げるという方法は、私にとっては生きた自然を学習する最適なスタイルです。

次回31話から39回までは、今までのソフィアート・ガーデン物語とは少し趣向を変えて、こうした植物の観察を中心に、種類や特徴、エピソードなどを紹介していきたいと思います。


 『ソフィアート・ガーデン物語』 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )


メモ(本文とは直接の関係はありません)
本日の金環日食について備忘録として記録しておきます
軽井沢は晴天で、7時35分頃に金環日食がはっきりと観測できました。
光量が暗いのに影と光がくっきり その時はキビタキ(夕方19時近くまでさえずる)の声が目立って聞こえ、太陽が金環日食から脱する過程では、ガビチョウなどが鳴き、続いてシジュウカラなどのカラ類が賑やかになりました。日常と変わっているかどうか、よくはわかりませんが、愛知県犬山でモンキーセンターのサルが飛び跳ねるなど夕方に示す行動を取ったという新聞記事(時事通信 5月21日(月)10時3分配信)などから考え合わせると、キビタキのさえずりも夕方の行動と特徴的には似ているかもしれません。また、ガビチョウやカラ類の鳴き声は夜明けの特徴に似ているように感じました。もっとも、ガビチョウやカラ類はいつも元気に鳴いているので、普段と変わらないという見方もできます。とはいえ、私が見ていても、日差しに独特な光線の変化があり、木の葉の色や艶がかなり変わって(俗に言う「太陽雨」「狐の嫁入り」のときのような)見えましたので、自然の変化に敏感な野鳥たちも対応した反応を示すことはあるかもしれません。

 
 
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