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■第23話 「棘(とげ)と蔓(つる) −バラとクレマチスの競演−」 2012年5月10日

どちらも芳香です 五月も半ばに入ると、そろそろ白モッコウバラの葉とともに、小さな蕾がどんどん上がってきます。ここ軽井沢は寒冷地のため、平地では早春に咲くモッコウバラも、これからゆっくりと咲きはじめます。同時に、何種類か植えてあるクレマチスのモンタナ種の葉と蕾も見えてきました。ほかの蔓バラも、虫にとってはおいしそうな柔らかい葉を広げています。

5月下旬から6月、種類によっては7月頃まで、一年で最もあでやかなバラとクレマチスの競演が始まります。冬が寒かったため、今年は例年より遅めなのかもしれません。

バラの栽培においては、春の開花のための剪定は、平地では主に冬に行うようですが、私は5月に入ってから行います。氷点下の寒い中での作業を避けたい、ということもありますが、この時期にならないと枯れているのかどうかの区別がつかない枝も多く、また寒い時期に剪定しても、その部分が凍結で黒くなってしまうため、どうしてもこの時期に剪定し直すことになるからです。バラは多いときで40種ほど栽培しました。バラとクレマチスの世話はもっぱら私、スタッフMが担当します。

小さい頃に好きだった石けんの香り 軽井沢は、冷涼な気候と寒暖差から虫がつきにくく、色鮮やかな美しいバラ栽培も可能です。実際にバラの専門ガーデンも複数あります。もう少し足を伸せば長野県内、あるいは八ヶ岳方面にはバラの栽培最適地がたくさんあります。

他の地域と異なる特徴としては、軽井沢においては霧が多く、ちょうどモッコウバラの時期などは、やわらかいモッコウバラの葉がうどん粉病になりやすい、ということがあります。

こうしたバラ特有の病気や虫の「害」などに対しては、薬剤の散布が一般に行われますが、私どもは他の樹木や草花同様に、完全無農薬を徹底しております。

病気にしてしまったのは、植える場所と樹種を間違えた人間のほうですので、日当たりや風通し、樹種などの何が原因かを考え、薬剤以外で対応し、それでも無理なら諦めます。

そして虫は野鳥たちの大切な食べ物です。 虫を見かけると「あ、ごちそうだ!」とつい言ってしまうほどです。
もちろん私どもは食べません・・・。

さらに、虫は私に代わって、せっせと葉や枝を適当に剪定し、風通しや日当たりを調整したり摘蕾により花数を調整して樹勢を保つ自然の庭師だと思えば、虫もかわいく見えるものです。

ありんこが蜜にひかれて花に・・・ ソフィアート・ガーデンでは日当たりの良いところに野バラは自生しているものの、雑木林とバラの組み合わせが少し難しいところです。
一方、私どもの自宅は古くから人の住んでいる地域であり、軽井沢の中でも日当たりや風通し、土の水はけなどの点でバラ栽培が比較的容易な条件にあります。

クレマチスのモンタナ種は、数メートルにも及ぶ長い蔓状に生育し、強い芳香のある花を蔓いっぱいに咲かせます。モンタナ種は、もともとヒマラヤ地方の高山に自生する品種を改良しているため、まさに当地にぴったりの植物です。

自生と言えば、私どもが野生のクレマチスと呼んでいる「ボタンヅル」は、放っておけばあちらこちらから生えてきて、庭木にあたりかまわず巻きつくため、いつも抜いてしまいます。学校のグラウンドのフェンスなどで大きく育ったボタンヅルが白い美しい花を咲かせ、やがてふわふわの綿毛の大量の種をまき散らしますので、無尽蔵に生えてきます。自生植物の強みでしょう。

またスイカズラ(忍冬:にんどう)も自生しています。常緑の蔓性で、ジャスミンのような甘い芳香のある白色(やがて黄色)の花をたくさん咲かせ、花は「金銀花」と呼ばれる漢方薬になります。ロープのように強い蔓茎にも薬効成分があるようです。スイカズラは増え続け、門柱や生け垣に幾重にも絡みついており、花の季節には家の周りに芳香が漂うので、こちらはボタンヅルと待遇が異なり歓迎します。黒い艶やかな実もきれいです。あまりに盛大に茂るため遠慮なく切りますが、またすぐに繁茂します。

「棘と蔓の怪物」です クレマチスとバラ、という組み合わせは美しく優雅で、よく書籍などでも紹介されていますので、私も最初は何も知らない強みで、蔓バラとクレマチスを組み合わせて植えて育てました。ところが、これが何メートルにも大きく育つと、手入れが大変な組み合わせであることが分かってきました。

とくに、棘の多い蔓バラとクレマチスのモンタナ種を組み合わせた場合、手入れのたびに、なぜここまで苦行しなければいけないのかと、ぶつぶつと自問自答を繰り返してしまうほどです。

さらに、そこに生け垣の常緑のソヨゴとアケビ(ミツバアケビと自生の5葉のアケビ)、スイカヅラが混ざろうものなら頭を抱えたくなる複雑さです。もっともパズルが好きな人は楽しめるかもしれませんが・・・。
生け垣を外側から見れば、春はアケビの花が咲き、初夏から夏にかけてはバラとクレマチスとスイカズラの花が咲き、秋にはソヨゴの赤い実が揺れる、楽しい垣根になっていると思います。

こうした複雑怪奇に絡みつく「棘と蔓の怪物」の世話は、パートナーが手を出そうものなら、人間も植物も双方ひどいことになってしまいますので、これだけは植えた本人が愛と責任感でがんばります。

この上品な香りはうっとりです 白モッコウバラは、自宅の玄関とその脇の車庫をつなげるように、高いアーチ状に誘引して植えています。数年で3,4メートルに達し、いまでは幹周りが太くひび割れして、樹木の風情に育ちました。これは小鳥たちに人気の木です。

蔓を横に誘引していますので、まるで止まり木のようになり、玄関の深い軒庇が雨、雪、風を遮る守られた空間でもあるため、小鳥たちの格好の休憩スポットとなっています。休憩ついでに虫もどんどん食べてくれます。

あるとき、そこにウグイスが寝ていたこともありました。夜の帰宅時に自動感知式の玄関灯が灯りますが、モッコウバラの枝に、ウグイスの眠そうな困惑した姿が目の前に照らされて、こちらも驚きました。寝ているウグイスを起こして悪いことをした、という気持ちと、でも家に入るために仕方がないという気持ちで、私どもも困ってしまいました。いくら安心できる場所であっても、玄関先で寝るのは勘弁してほしいものです。

この玄関先のモッコウバラのアーチは、いろいろな生きものが好むため、ちょっとした動物園になる場所でもあります。スズメバチの女王様が白い「とっくり」状の巣を作り始め、玄関先でスズメバチの巣はちょっと困ったなあ、と思案しておりましたら、いつの間にか中断して、作りかけの白い「とっくり」がポロリと落ちていました。蜂の巣については回を改めて紹介します。また、あるときは大きなアオダイショウが玄関先のモッコウバラの枝で休んでおり、驚いたこともあります。

このバラの棘が大変なのです! モッコウバラは、棘もなく香りも良いので、人が出入りする場所には最適です。普段は人が通らないところに何カ所か、棘のきついバラを害獣除けに(?)植えています。もともと軽井沢には生息していなかったサルが、近年他地域から来襲して庭を荒らしたり、屋根に上って走り回るようになり、それを防ぎたいためです。しかし、あの手合いにはバラの棘は効かないようで、もっぱら植えた人間が世話するときに刺されるための棘となっております。

とはいえ、バラとクレマチスモンタナ、そしてスイカズラの芳香の中で、しばし幸福感に浸るひとときは、良い香りが何より好きな私にとって絶対に必要なものです。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第23話 「棘(とげ)と蔓(つる)」 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )

 
 
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