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■第24話 「蜂の芸術」 2012年5月11日

花から花へ、一瞬たりともじっとしていません 自然豊かな土地でよく目にするスズメバチの巣は、蜂たちの営みの芸術です。スズメバチは、人間にとって少し厄介ではありますが、大きな恵みをもたらしてくれる大切な生きものです。鳥と同様、植物につく虫を大変な勢いで食べてくれますし、果樹の受粉にも役立ちますので、農業圏では益虫として大事にされている存在です。
大きなスズメバチの巣は、このあたりでは縁起物として、壊さずに取り外して特殊な加工をしたうえで床の間飾りにする家もあります。立派な巣は金運をもたらすものとして歓迎され、大切にされています。

一方、マルハナバチなどの「ハナバチ」は、スズメバチとは違い肉食ではなく、花粉や蜜を食べ、攻撃もしないおとなしい蜂です。花から花へと、花粉だらけになりながら、丸いおしりを振って蜜を吸う姿はかわいらしく感じられます。こちらも果樹の受粉には欠かせない大切な昆虫です。

ところで、スズメバチとの付き合い方を間違うと、危険なこともあります。
ミツバチは一度刺してしまうと針が取れて蜂自身の命も落としてしまいますが、スズメバチはそのようなことはなく、何度でも刺すことができます。また、その毒性も比較にならないほどで、一度刺されると蜂の毒に対する抗体が生じ、二度目以降は、それによるアナフィラキシーショックと呼ばれるショック症状が起こり生死にかかわることもある、と言われます。

スズメバチには、有名なキイロスズメバチのほかに、軽井沢でよく見かける(小型ではない)コガタスズメバチがいます。また、世界最大級といわれるオオスズメバチもいます。キイロスズメバチとコガタスズメバチは2センチほどで、これでも結構大きいのですが、オオスズメバチは4センチほどにもなり、間近で見ると迫力があります。私は、目の前で、狩りをするオオスズメバチを見たことがあります。一瞬でコガタスズメバチを捉えて、その頭や手足をぽいっと外し、あっという間に丸めて肉団子にして持ち帰る場面に唖然としてしまいました。実はある意味、クマより恐ろしい存在で、刺されたら死に至るというのもうなずけます。

白い陶器の「とっくり」のようで美しい オオスズメバチは地面の中に巣をつくるため、当地の蜂の巣駆除業者は「ジグマン」と呼んでいます。この話を聞いてからは、山を歩くときも、危なそうなところでは、この巣がないかを無意識のうちに気にしながら足探りをして歩いております。本当に恐い存在です。

ちなみに、信州では蜂の子を食べる食文化があると聞きます。このジグマの幼虫も食べる人もいるようです。蜂からすれば、大事な子(幼虫)を食べてしまう人間こそが一番恐ろしい、と思っていることでしょう。

オオスズメバチだけではなく、キイロスズメバチやコガタスズメバチなどのスズメバチでも刺されたら大変ですので、蜂の性質を勉強したうえで、蜂に遭遇するエリアにおいては、彼らをむやみに刺激しない行動をとることが大事です。

蜂は熊が天敵であり、熊に似たような黒いものに向かってきますので、白っぽい服装が良いでしょうし、帽子などで黒い髪の毛を覆うようにします。また香水なども攻撃性を刺激してよくありません。ブーン、と飛んできたら、決して手で払いのけたり叩いたりなどせずに、じっと動かずにいるか、さっとその場にしゃがみ込み、静かに速やかにその場を去ります。

もし、スズメバチが「カチカチ」という音を立てていたら、怒って威嚇していますので、興奮させないように退去するしか方法はないそうです。幸いにもカチカチ音は聞いたことはありませんが、目の前をブーンとスズメバチが飛ぶのは日常茶飯事で、別に気にせずに過ごしています。相手の蜂も普段は忙しく、私に構っているより虫をとるのに夢中のようです。

どんどん大きくなるマーブル模様の巣 私どもの家では、二度、スズメバチの大きな巣の完成を見ました。一度目はヤマボウシの高い枝、二度目は2階の一番高い軒先です。大きなヤマボウシの木にはコガタスズメバチが、家の軒先にはキイロスズメバチが営巣しました。

高い場所に巣を掛けるときは大きな台風は無いとか、低い場所なら大水は無いとか、気象を占う予兆としてみる言い伝えや、巣をかける家は火事が起こらない、巣をかけるとお金持ちになる、などのうれしい言い伝えもあります。

スズメバチの巣は、大きくてきれいなマーブル模様で、松などの樹皮を口で剥いで練り固めたものを貼り付けて作っているようです。

最初は女王蜂が単独で、真っ白い陶芸のツボのようなものを作っていき、同時にたくさんの子を生み育てていきます。そして、その子たちが巣を作り出し、虫を取って子育てを担当するようになれば、女王蜂は産卵に専念することができます。こうして蜂の集団は一気に膨れ上がっていきます。


女王様の孤独な「とっくり」づくりは、何らかの困難(女王蜂がオオスズメバチなどに襲われるなど)で中断することも多いようです。前回の第23話「棘と蔓の怪物」では、私どもの自宅の玄関にスズメバチが巣を作りかけたものの、中断してしまったことを書きましたが、それも何か事情があったのでしょう。

昨年は、ソフィアート・ガーデンの小屋にも、切り妻の軒部分にアシナガバチの巣が掛かりました。長細いボール状に包まれたスズメバチの巨大な巣とは対照的な、開放形の、いわゆるハニカム構造がよく見える、小さなかわいらしい巣です。

スズメバチの女王様が偵察中・・・ ガーデンでは、秋も深まり木々が落葉すると、そこで初めて、大きなスズメバチの巣がかかっていたことに気がつきます。

散歩していると、古くなって、高い木から落ちた巣のかけらを見つけることがありますが、小さい体で丁寧に作りあげられた芸術的な巣は美しく、その懸命さの名残に心を打たれます。

こうして、一匹で困難を乗り越えてコツコツと城を築いていく女王蜂の姿を見ていると、つい応援したくなります。この時期は、心細げに、しかし国家建設のためにも懸命に、うろうろと偵察を繰り返す孤独な女王様の姿を見かけるたびに、人に迷惑にならない高い場所の巣は、むやみに「駆除」という名で破壊せずに、できれば静かに見守ってもらえればいいなあ、と密かに祈るスタッフMです。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第24話 「蜂の芸術」 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )


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