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■第28話 「招かざる客」 2012年5月17日

ソフィアート・ガーデンは、5月中旬から下旬にかけての今頃が、一年中で最も美しい気持ちの良い季節です。

木漏れ日 新緑の輝きで庭中が光を帯び、サクラソウやエンレイソウの山野草の満開の花が東からのおだやかな風に揺れています。ユキザサの群生も、蕾を膨らませ、やがて白い花を咲かせようとしています。芽吹きの独特な風情がおもしろいヒトリシズカも、いまは普通の草花と紛れて、すっかり静かにたたずんでおります。

5月はじめにスミレが一面に広がったスミレ広場も、クサソテツの葉がすらりとレースのようなシダの葉を伸ばし、オオバキボウシの芽も地面のあちらこちらから集団でニョキニョキと尖った芽を突き出しています。ウバユリの葉もツヤツヤと生まれたての厚い葉を広げて日光浴を楽しんでいるかのようです。

オオバギボウシは、そのみずみずしい太い茎をお浸しにして上等の山菜として味わえるようで、スーパーや百貨店などの食品売り場でも 「うるい」 として店頭に並びます。

私どものガーデンでも、以前、葉の部分をちぎり捨てられたオオバギボウシがみつかったことがあります。
はじめは、サルの仕業かと思いましたが、その場に居合わせた植木屋さんは「これは人間がやったことだな」と言いました。

大きな葉も紫の花もきれいなので食べません 当時は食べられることを知りませんでしたので、何の目的でこのような変わったことをするのか理解に苦しみました。もっとも、おいしく食べられることを知った今でも、擬宝珠(ギボウシ)の美しい葉や花の風情は食べるより鑑賞するほうが価値が高いと思っていますので、私どもは大切に育てています。

春から初夏へと季節は加速していき、キラキラとした新緑の木漏れ日が、だんだんと大きな葉のかさなりに遮られ、緑陰へと変わっていきます。そろそろ、招かれざる客の季節でもあります。

ソフィアート・ガーデンだけではなく、自然豊かな田舎の常ではありますが、いろいろな虫が多いのです。

特にこの季節は、私どもが「ストーカー」と呼んでいる、1ミリにも満たないようなごく小さな黒い虫が出ます。私にしてはめずらしく、その正体を調べる気にもなりません。

わずか1、2匹ではありますが、しつこく顔の前を飛んでつきまとい、草木を撮影しようとするとカメラの前に必ず出てきて「虫のドアップ写真」となってしまいます。特に刺したりすることはなく、目やカメラ、めがねなどの光り物が好きなのか、顔の周辺を飛び回るのですが、邪魔で仕方がなく、困った虫です。

私は、庭のヨモギの葉を干したものをウオッカに浸して「ヨモギチンキ」をつくり、ハッカオイルと混ぜて希釈したものを、天然の虫除けスプレーとして活用しております。顔や手足にスプレーすればとても香りが良いので、気分が爽快になり虫もいったんは離れるのですが、しばらくして香りが薄らぐとストーカー行為が再発します。

木漏れ日から緑陰へ あまりしつこい時は、駐車場などの日当たりが強いところに私どもは逃げます。どうやら「ストーカー氏」は人間同様、涼しげな木漏れ日が好きなようです。

ガーデンの近くには、流れの速いきれいな小川があり、そこではカモやオシドリが憩い、また人の話によればイワナやヤマメもいるそうです。しかし、そうしたすばらしい環境は、実は「ブヨ」という、刺されると1週間は腫れて大変な思いをする虫が好む環境でもあります。渓流釣りが好きな人にとってはおなじみの虫でしょう。

また、夏にはヤブ蚊も登場します。私はブヨに、パートナーはヤブ蚊に弱いため、これからの季節は、自衛のため、ソフィアート・ガーデンではアウトドアよりインドア派になってしまいます。小屋が出来てからは、網戸のありがたさをつくづく感じます。

ある休みの日、私どもが庭掃除をしたり、ガーデンで晩ご飯の材料を摘みに歩いていると、近くの別荘の管理をしている人が声をかけてきました。パートナーが言うには、その人は開口一番「そろそろ出ていませんか」と聞いてきたとのことでした。

普通はさっぱり意味の分からない問いかけですが、私どもには「何が」出たのかという意味がすぐにわかります。 イノシシです。この季節、美しかった芝生や苔の庭が、一夜にしてトラクターで耕されたかの様相を呈していることがよくあります。イノシシは別に荒らすことを目的としているわけではなく、地面の下のミミズを掘って食べるのですが、これがまた熱心に掘り返すため、庭の持ち主をがっかりさせるのです。

長生きの宿根草 幸いソフィアート・ガーデンは、山野草(食べたら毒)が多く、イノシシは毒を避けてか、あまり暴れていないようです。ウバユリやヤマユリの根を掘ることがありますが、芝を貼っていない庭ですので、イノシシに掘り返されても足でひょいと土をならしてしまえば目立たないため、それほどイノシシの被害を深刻に受け止めておりません。

しかし、よちよち歩きの小さい「ウリボウ」はまだしも、体も大きくてするどい牙をもつイノシシは出くわすと大変危険です。イノシシは猪突猛進の例えもあり、真っ直ぐしか走れないと思っている人も多いかもしれませんが、実際の走りは華麗なUターンも可能ですし、土手から1メートル下にある小川を泳いだり、そこからジャンプして陸にあがったりなど、意外に器用です。

また野生動物はダニなどを体につけていて、笹藪に触れるとダニがついて大変な思いをすると聞いていますので、私どもは藪には入らないようにしております。普段山道を歩くときでも、脚絆や長靴、肌の出ない服装、ツルツルとした素材の上着を羽織って、細心の注意を怠りません。

ガーデンのあたりの林を称して、この土地をよく知る人は「ここには何でもいる、いないものはない」とか「野生の王国」などと言うことを耳にしました。さすがに、ライオンや象はいませんが・・・。

鳥類や小動物はもちろんのこと、ニホンカモシカ、ツキノワグマ、キツネ、タヌキ、テン、イタチ、そして以前には軽井沢にいなかったシカ、サル、ハクビシン、アライグマなど、なんでもありです。

また来年会いましょう! こうした招かざる客が現れるのは春から夏のシーズンだけではありません。

雪の日にはいろいろな動物の足跡が残りますが、ある日、大きな「雪男」のような足跡がガーデンを横切っていたのにはさすがにぎょっとしました。未知の生きものも、いるようではあります。

また正月には、雪の景色に映える、美しい赤い実が枝いっぱいについたコマユミの2メートル近い老木を、何本も根元から盗伐されたこともあります。正月飾りの売り物にしたのかどうかわかりませんが、鳥たちの冬の貴重な食料であり、ガーデンの冬を美しく彩る天然の正月飾りであっただけに、私どもはたいへん悲しくて憤りました。ガーデンの山野草の盗掘や、キノコ狩り、山菜取りなどの不法侵入も経験しています。

ソフィアート・ガーデンは、こうした招かれざる客をもてなすすべを持ちません。日々の知恵と工夫で乗り切るしかありません。

数年前に、山仕事をする人と野生動物について立ち話していたときのことです。山野草にくわしいその人が、「しかし、動物より一番こわいのは人間だ」とぽつりと言ったのは、本当にその通りだと思います。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第28話 「招かざる客」 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )

 
 
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