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 ソフィアート・ガーデン物語
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■第3話 「木の香り」 2012年4月12日

軽井沢の町木コブシ 2003年の春、いまから9年前のちょうどこの時期、パートナーと私は、ふと思い立って、生まれて初めて軽井沢を訪れました。もちろんこの地が避暑地として有名であることは知ってはいましたが、特に軽井沢という土地に魅力を感じることもなく、縁遠い存在として訪れる機会もありませんでした。

事前の下調べもほとんどせずに、ふらっと訪れ、こじんまりしたペンションに宿泊しました。人影もまばらで、足元も春のぬかるみで歩きにくく、まだ草木も芽生えぬ時期ですが、凛とした冷たい空気が気持良く、静かで素朴な土地に不思議な魅力を感じました。


このあたりではモミはモミソとも呼ばれます たまたま、軽井沢の離山(はなれやま)通りの裏にある静かな別荘地の木立を散歩していたとき、どこからともなくとてもいい香りがしました。
ハッカのようにすっきりとさわやかでいながら、すこし甘酸っぱいような香りです。あたりには針葉樹の茶色くなった葉がたくさん積もり、頭上には大きなモミの木や、さまざまな落葉樹の枝が広がっています。
たくさんの小鳥の楽しそうな声が、そこかしこから聞こえてきます。まだ誰もいない別荘の庭の地面を柔らかそうなスギゴケが覆い、明るい陽だまりとなって輝いています。遠くの家のストーブの煙突からは、薪を焚く香ばしい煙がゆらゆらと上っているのが見えます。

この不思議な香りは、一体どこから来るのでしょう・・・。
いい香りの記憶は、静かな木立やにぎやかな小鳥たちの声、明るい日差しと渾然一体となって「気持ちよい」という感覚とともに奥深く沈んでいきました。

その香りの記憶に導かれたのか、縁あって私どもは離山通りの近くに住むこととなりました。そしてのちに、ソフィアート・ガーデンを作っていく際にも「香り」というキーワードは私にとってとても大切なものになりました。
四季折々に、その季節だけに許された自然の放つ良い香りを、存分に味わいたい。木だけではなく、もちろん草花も土も含めて、自然界の香りの豊かさを思うと、嬉しくなります。

ガーデンには、5〜10メートル程度のウラジロモミが10本ほどあります。そして、初めて軽井沢の木立を散歩したときに包まれた、あのハッカのようにすっきりとさわやかな香りと同じ香りを、時々漂わせています。
特に台風の後などには、ヒノキやレモンのような清涼感のある香りもします。モミの枝が強風で傷つき、自らの樹液(ヤニ)で治癒をしようとしているのでしょうか。

ガーデンの秋のカラマツ また25メートルほどの樹齢およそ70年のカラマツも複数あります。ガーデンに建屋を建てるときの材に使うために、数年前に8本ほど切りましたが、ガーデンに連なる雑木林にはたくさんのカラマツがありますので、晩秋にはサラサラと霧雨のように黄色い落葉が降り注ぎます。「落葉松」という名前どおりです。
このカラマツの落葉は大地に積もり、静かに自然界の微生物や酵母による熟成を受け、春にはやがて甘酸っぱいような良い香りをあたりに漂わせていきます。

ところでカラマツの樹液(ヤニ)は無色透明で粘着性が高く、においも触った感じもセメダインに少し似ています。大工の棟梁さんから教わったのは、佐久地方ではカラマツのヤニを小瓶に集めておいて、切り傷などに塗れば殺菌作用もありすぐに治る、ということです。一度私も手に塗ってみましたが、あまりのベトツキで手仕事がはかどらずに往生しました。しかし、病み付きになるカラマツのヤニの香りでとても楽しめました。

ガーデンには、良い香りの代表ともいえるカツラの木も何本かあります。秋のある日、綿菓子のような甘いカラメルの香りが漂うと、はっとカツラの黄葉に気づかされます。
戸隠神社の奥社にお参りする途中にもカツラの大木があり、秋の日には思わず、できるだけ息をたくさん吸って、辺りに漂う甘い香りを食べ尽くしたくなるような楽しさです。

ガーデンの白い貴婦人ヤクシマシャクナゲ ガーデンに自生するコクサギのツヤツヤの葉をちぎると、柑橘系の香りが楽しめます。
ヒカゲツツジやエゾムラサキツツジの花柄を摘むと、ゼラニウムのエッセンシャルオイルよりもいい香りが指に染みこみます。
もちろんスイセンの花やウメの花もすばらしい。
ガーデンに自生するアサツキを摘んでお吸い物に散らすと、ネギ特有の香りが立ちます。

夏には霧の中の白いウバユリの群生から芳香が漂い・・・と、「香り」については、まだまだ書き足りませんが、きりがありませんので続きはまた今度にいたします。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第3話 「木の香り」 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )


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