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■第38話 「庭の炉」 2012年5月31日 番外編(その7)

白い花が満開になると美しい 昨日の夕方は、今年初のホトトギスの声が聞こえました。いよいよ季節は夏へ向かって、と言いたいところですが、朝は意外に冷えて、まだ霜注意報も出ています。天気は良いのですが、本気で薪ストーブを焚こうかと思うほどでした。

明日から6月ですが、梅雨になると肌寒く感じることもあり、また室内の湿気を飛ばすために薪を燃やすこともあります。

私どもの薪ストーブは家の中央にありますし、年中使うという意味では、暖房器具と言うより昔の囲炉裏に似た存在と言えるかもしれません。

庭にも、囲炉裏のような場所があると、きっと楽しめることでしょう。ガーデンの木々は毎日枝を落とし、庭掃除するたびに枯れ枝がうずたかく積みあげられていきます。普段は庭の各所に枝置き場を設けており、使わなければ増える一方です。冬は小屋の薪ストーブの焚き付けに使う、といった使い道がありますが、それ以外の季節ではあまり用途がありません。また、いくら軽井沢とは言っても、真夏にストーブはさすがに使えません。

樹木好きなら、まずチェックすべきポイントでしょう そこで、屋外に石組みで炉を造ることで、真夏も含めて(悪天候の時は別として)一年中、簡単に小枝を燃やす場所ができないか、と思案しております。

このアイデアは、八ヶ岳倶楽部に遊ぶ中から得ました。倶楽部には、軽井沢に引っ越して庭造りに関心を持ち始めてから、何度も行って庭を散策し、そのすがすがしい風景を観察し、機知にとんだスタッフの人たちとおしゃべりしたり、たまに普通の園芸ショップでは扱っていない雑木の苗木を購入したりする場としてお世話になりました。

ここ2,3年は八ヶ岳方面にはあまり行っておりませんが、久しぶりに先日、パートナーが運転役となって私の大学時代からの友人と一緒に遊びに行きました。

友人は、まだ小さいお子さんもいるものの、すでに上のお子さんたちは立派に成長して大学生になっています。 私も樹木が大好きですが、彼女自身も庭園の設計施工の会社を立ち上げるほど庭や木が好きで、ぜひ私どものガーデンを見てみたいと、わざわざ遠方から泊りがけで遊びに来てくれました。

学生時代は音楽という趣味は共通していましたが、それから20年以上を経て、こうして庭や樹木という趣味が一致することになろうとは想像もしませんでした。

野辺山から広大な高原野菜産地や酪農地が広がります 今回は、新緑の軽井沢の自然と私どものガーデンを堪能してくれたついでに、落葉広葉樹の庭が大好きだと言うこともあり、彼女も交えて久々に八ヶ岳倶楽部を訪問することにしました。そして近くの清里の「萌木の村」にも立ち寄り、自然な雰囲気の庭の散歩を楽しみました。

彼女も私も、それぞれ庭や植物に対する関心が人並みはずれて強いので、二人が連れ立って樹木観察をすると、すぐに立ち止まっては植物話を初め、なかなか足が前に進みません。パートナーがしばらく経ってから私達を探しに来たとき、30分経っても5メートルほどしか進んでいないので唖然として笑っていました。まるで芋虫の友達同士がのんびりと散歩しているようです。

私は特に、今回は炉に注目して観察しました。八ヶ岳倶楽部の庭は、俳優の柳生博さんとご家族により、庭というより「風景を作る」という視点から丁寧に20年あまりかけて作り上げていった場です。柳生さんの庭造りへの深い愛と知恵が詰まっており、学ぶことの多い工夫を要所に垣間見ることが出来ます。

石の腰掛けが良い雰囲気です 特に炉は、柳生さんが最初に八ヶ岳で庭造りを始めた際に、地面で直接火を燃やしていたことに地元の古老達から注意を受け、山の焚き火は目に見えないところでくすぶり続けて思わぬ山火事につながりかねないと反省し、安全に燃やせる石組みの炉を造ったということがきっかけだそうです。

八ヶ岳倶楽部の炉は、八ヶ岳の地面を掘って出てきた石を組み合わせているだけあって、その土地の色にしっくりとなじみ、石の積み方も美しく、実用面でも地面や植物への火や熱による影響を防ぎ、安全でよく燃焼するようになっているようです。

腰掛けにもなる大きな石が階段状にすり鉢のように組み合わされており、火を囲んで家族や仲間で団らんができる、という素晴らしいスペースです。

柳生さんは著書の中で、手で持ち運びできる石で炉を組むことを勧めていますが、それは機械に頼らないことにより作り手の創意工夫を促すとともに、またその程度の大きさの石を使うことで微妙な隙間ができ、空気の通り道となり、うまく燃焼するという経験知から出たアドバイスなのでしょう。

暗い壁色に新緑が映える 清里の萌木の村にも大きな石組みの炉があります。そして軽井沢とは一部共通で一部違った植生の、美しい初夏の樹木や草花があります。そうした自生の植物を中心にすえたガーデンが、統一感のある素朴な建物群に調和して、良い景観となっています。

コナシ(小梨、ズミ:酸実、コリンゴ:小林檎)の花が真っ盛りで、また花期の遅いミヤマザクラ(深山桜)の白い細やかな花も木を覆い、クレマチスモンタナも各所でこぼれるような花の蔓が屋根や壁面を飾っていました。

八ヶ岳の鳥たちも営巣中で、ヒガラなどのカラ類が忙しそうに飛び回っています。私どものガーデンより標高が若干高め(1200〜1300メートル)で、植生も日当たりも微妙に違うものの、自然の豊かさでは共通している場所です。友人も私どもも、植物に癒され大いにリフレッシュすることができました。

枝がどんどん増える ソフィアート・ガーデンの一角に、庭仕事のときに地面から出てきた様々な石を集めております。これで屋外の炉を造ってみようと思います。石の種類は浅間石のほかに、以前からこの場所にあった構造物に使われていた石積み用の大きな河原の丸い石や、玄武岩、砂岩等などです。

石も大地の古い歴史を閉じ込めた興味深いものであり、植物同様、見ていて飽きません。こうした石をうまく並べて、よく燃える小さな炉を試行錯誤で造ってみたいと思います。

原始からのヒトの喜びであり、力の源泉である火を、屋外で安全に楽しむ場である石組みの炉ができれば、きっと今までと違った発見があるでしょう。
焚き火料理ができれば最高です。

ガーデンの手入れをした私どもへ自然から贈られるご褒美だと思って、時間をつくって少しずつ頑張ってみようと思います。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第38話 「庭の炉」
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )

 
 
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