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■第17話 「巣箱」 2012年5月2日

軽井沢は苔が豊富なので巣材に最適 私どもの自宅には、東、南、西の3方向に巣箱を掛けております。いずれもカラ類とよばれるシジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラサイズのもので、巣穴の直径は28ミリです。コガラも入る大きさですが、コガラは木の洞が好みのようで、人の掛けた巣箱を利用するという話は知りません。ヤマガラは、私どもと仲良しになってはくれるものの、こちらが用意した巣箱には営巣してくれません。というよりも、うちにくるヤマガラはのんびりしており、営巣時期にはすでにどの巣箱も入居済みになっている、といったほうがよいかもしれません。毎年、早めに入ってくれないものか、と願っているのですが。

私どもの巣箱の常連客は、もっぱらシジュウカラとヒガラです。
ソフィアート・ガーデンの巣箱もあわせると、私どもの掛けた巣箱や樹木に営巣する鳥の家族は、毎年数世帯になります。

2、3年前のことですが、家の北西のモミの木に「早贄(はやにえ)」で知られるモズが営巣し、建物の反対側の東の巣箱にはシジュウカラが先に営巣していたことがあります。私どもはシジュウカラの雛のことを毎日心配しましたが、どうやらシジュウカラ夫婦が卵をかえす時期を遅らせてモズの巣立ちを待っていたようで、モズが巣立った後に、無事にシジュウカラも巣立つことが出来たようです。

顔をのぞかせているのはヒガラの親鳥 ここで、私どもの失敗談を一つ。
以前、寝室の窓に巣箱をつけたことがありますが、毎朝4時頃から「コツコツコツコツ・・・(以下無限に続く)」という音で起こされ、その頃仕事の資料作りなどで深夜の2時、3時頃に就寝する生活をしていた私どもは、巣立つまでの間、睡眠不足を耐え忍ぶ(!)日々が続きました。

それ以来、寝室近くには巣箱の設置は避けることにしました。

ちなみに、このコツコツ音は、鳥が巣箱の丸いくり抜き穴の縁を面取りして、自分好みのサイズに調整する音のようで、のちに巣立った後に掃除する際に、杉の巣箱の出入り口をきれいに面取りした様子を見て驚いたものです。

6月初旬の晴れた日曜日のこと、そろそろ巣立つ頃かと思い、寝室のレースカーテン越しに件の巣箱の方を眺めていましたら、雛の巣立ちを促すような親鳥の様子が見られました。虫をくわえて巣穴を覗くものの中には入らず、虫を見せびらかして巣箱を離れる、という動作を繰り返します。雛たちはお腹が空いて、親鳥が来るたびに大声で餌を催促します。

やがて、この巣箱から一羽の薄墨のような淡い色をしたホヤホヤと産毛の逆立つシジュウカラ雛が飛び出しました。普通シジュウカラの巣では数羽の雛が育つことが多く、巣立ちの時間も経験的に30分程度ですので、私どもは軽い気持ちで眺めておりましたら、5、6羽巣立ったのちにも、7羽、8羽、9羽・・・と続きます。

10羽を過ぎると、もう驚きに変わり、いったい何羽入っているのか想像もつきません。なんと最初の雛から最後の一番チビさんまで2時間以上かかっての観察結果、総勢13羽の巣立ちを見守ることととなりました。野鳥の会の関係者にお話ししたところ、「13羽なんて聞いたことも無い」と目を丸くしておられました。

雛の嘴の中は黄色です 最初の雛は、たいてい体も大きく、生育が良いのですが、一番最後の雛は、兄弟の下敷きになっていたかのように、か弱くて体もちいさいものです。

巣立ちにも一羽一羽の個性がよくあらわれており、躊躇なくさっと巣立つ雛もいれば、初めて見る外界のまぶしさに口をあんぐりとあけて見入り、何度も中に戻ってしばらく逡巡し、ようやく他の雛に続いて出る、などなど。どうぞ、元気にいのちを全うできますように、と祈る気持ちで、13羽の巣立ちを見送ったものです。

最後に巣立った雛は、体は小さいけど気が強くて声が大きく、お兄さんお姉さんに負けずに「メメメメ!」と自己主張して親に虫をねだっていたのを覚えております。

親鳥は、しばらくの間、巣箱の前のマユミの木の茂みに巣立ったばかりの雛たちを集め、外敵に気を配りながらも必死に虫を探して持ってきます。そのうち、雛たちは小さな足下のマユミの葉をむしってかじってみたり、思い思いの行動をはじめ、やがて集団保育の場は広範囲に広がり、最後には親離れした雛たちの集団活動に移行していきます。 仕事で不在のことも多いので、いつも巣立ちを見られる幸運に恵まれるとは限りませんが、十分雛が育ち、たまに雛の嘴が巣箱の丸い暗い穴からちらりと見えるようになると、巣立ち日もそろそろです。軽井沢では、6月のよく晴れたさわやかな日が巣立ち日に選ばれることが多いように思います。

虫を持ってきたら帰りは必ずコレです 私どもが観察した限りでも、鳥の巣箱というのは大変清潔なものです。フンなどの排泄物は全く入っていません。人間が寝床を汚さないのと同様、親鳥は細心の注意を払って、清潔で温かく柔らかい環境を保守します。よくできたもので、雛の排泄物は水分も含めて白いカプセルのような袋に包まれており、親鳥が虫を与えると雛は排泄し、それを親鳥が口にくわえて遠くに捨てに行きます。外敵に雛の存在を気づかせないために、そうしているとも言われています。

巣箱から出てくる親鳥の嘴にくわえた白いカプセルの大きさで、雛がどんどん大きくなっていく様子がうかがえます。もちろん巣箱を開けたり近寄ったりすることは私どもは絶対にいたしません。寝室の窓に巣箱をつけたときなど、雛が巣立つまでの間、その窓を開けることをあきらめました。

自然観察の団体等で、巣箱に小型のファイバースコープなどを入れて、巣穴の様子をリアルタイムでモニターできる設備を持っているところもあります。

軽井沢の星野温泉近隣には、国設野鳥の森という、すばらしい野鳥の楽園があります。日本野鳥の会の創立者である中西悟堂が星野温泉に滞在した折に、隣接する国有林が世界的な野鳥の宝庫であると指摘し、星野温泉の経営者もそれに刺激を受け中西悟堂とともに保護活動を行い、「国設軽井沢野鳥の森」となって今に至ります。その活動を現在中心となって行うNPO法人ピッキオ(星野リゾートが運営)は、自然観察などを行う施設内で、野鳥の巣箱やムササビの巣箱などの映像をリアルタイムで放映しています。ピッキオの前代表の方から、そのような巣箱観察の仕組みの作り方をうかがいました。ピッキオには私どもも学びや相談の場として信頼を寄せております。

とはいえ、私どものような個人は、本格的な観察施設は持てないので、せめて邪魔にならないように巣箱を遠巻きに遠慮がちに眺めるぐらいがちょうどいいようです。

みんなが苔を持っていってもすぐ生えるから大丈夫! 今、ソフィアート・ガーデンの巣箱にも、すでに大変仲の良いシジュウカラ夫婦が営巣しております。また自宅の居間の南の窓に掛けた巣箱にも、ヒガラがせっせと苔を運んでいるところです。

最も人気のある東の巣箱には、今年もシジュウカラが営巣中です。その期間、鳥たちは環境の変化に敏感であり、おいそれと庭仕事はできません。鳥に遠慮しながら巣立ちまでの間、私どもは小さくなって過ごします。

先の休日、晴れたので久しぶりに「庭の手入れでもしようかな」と長い剪定ばさみを持って玄関のモッコウバラの枝を整理しておりましたら、さっそく離れた東の巣箱からシジュウカラ夫婦が飛んできて、「キチキチキチ(訳:ちょっとやめてくれませんか、邪魔なんですけど!)」と注意しに来ます。

そのたびに「あ、すみません・・・」とすごすごと引き返す、情けないスタッフMであります。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第17話 「巣箱」 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )


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